ポルトガル語を知ろう!

ポルトガル語は、世界9ヵ国の公式言語とされ、本国ポルトガルの人口が1,000万人であるのに対して、話者数が2.6億人います(国際SIL調べ)。また、世界7,000言語のうち、ポルトガル語の話者数は7番目に多いといわれています。話者数が多い理由として、15世紀の大航海時代の幕開けの時に、世界各地にポルトガルが進出した結果、その植民地でポルトガル語が話されるようになったと言われています。

まずは、ポルトガル語からポルトガルの歴史を紹介します。

ポルトガル語はローマ帝国時代に入植してきた人たちの話していたラテン語の話しことば(民衆ラテン語)から形成された言語です。しかし、ポルトガルの歴史を見ると、ポルトガルへの人の出入りは複雑でポルトガル語の形成にも影響を与えています。

ローマ帝国領になる前、ケルト系の民族がイベリア半島に住んでいましたが、この人たちのことばの影響はほとんど見られないようです。
5世紀にゲルマン人が侵入し、彼らがイベリア半島を支配します。Guerra(戦争)やFernando(人名)など、ゲルマン人のことばを起源とするポルトガル語の語彙は多くあります。
8世紀にイスラム教徒がイベリア半島に侵入し、短期間で征服されます。これに抵抗することをやめなかった人たちは、イベリア半島の北部へと逃れます。この、北部へのがれた人たちが話していたことばが、現在のポルトガル語、スペイン語、カタルーニャ語(バルセロナ周辺のことば)のもとになっています。(イスラム教徒の話していたアラビア語の影響は、語彙だけでなく文法や発音にも及んでいるといわれています。)

半島の北部に逃れた人たちの中でも、ポルトガル語のもとになっているのは西部(現在のガリシア地方)にいた人たちの話していたことばです。ガリシア=ポルトガル語galego-portuguêsと呼ばれています。(ガリシア=ポルトガル語は、ポルトガルの独立とガリシア地方のスペイン帰属により、後にポルトガル語とガリシア語に分かれます。)

一方で、北部へと逃れることなくイスラム帝国の支配下にあっても、そのまま自分たちの土地にとどまった人たちもいました。(イスラム教徒たちはそれまでの住民であるキリスト教徒たちに寛大で、イスラム教に改宗すれば良い、改宗しなくても税金を納めればキリスト教徒としてそのままそこに住んでも許されたようです)この人たちは「モサラベ」と呼ばれました。

やがて、北に逃れた人たちがレコンキスタ(「再征服」を意味)を始め、徐々に南へと領土を回復していきます。ポルトガルはその途中の1143年に建国を宣言します。その後もレコンキスタは続き、1249年にFaro(ポルトガル南部の町)を占領してポルトガルのレコンキスタは完了しました。(スペインのレコンキスタの完了は1492年なので、それよりも200年以上早かったことになります。)

このレコンキスタにより、北へ逃れた人たちの話すことばと「モサラベ」と呼ばれる南部に留まっていた人たちの話すことばが接触しポルトガル語が形成されていきました。

つまり、イベリア半島にケルト人→ローマ人→ゲルマン人→イスラム教徒といった人たちがこの順に入ってきたことになります。そして、ポルトガル語はローマ人以降の人たちの話していたことばが形成に関係しているといえます。

次にポルトガル語でもブラジルポルトガル語と呼ばれる言語について紹介します。

ポルトガル語と一言で言ってもブラジルで話されているポルトガル語とポルトガルで話されているポルトガル語には大きな違いがあります。文法、発音、表現、話し方などおよそ同じ言語といっていいか分からないぐらいの大きな違いがあります。特にブラジル人がポルトガルに行った場合は、相手は自分の言うことを理解していても、ブラジル人がポルトガル人の言うことが分からない、ということがよくあるようです。

どのような違いがあるのか項目別に紹介します。

発音の違い

発音の中でも最大の違いは母音だと言えます。ブラジルポルトガル語の母音は比較的シンプルで、“a, e, i, o, u”の基本母音5つのみ。ポルトガルでの母音はブラジルポルトガル語と同じ基本母音に加えて、狭母音や曖昧母音といった口をあまり開けずに発音される母音があり、それらは基本母音と明確に区別されています。

他にも、“s”の発音に違いがあります。ブラジルポルトガル語では、sは文字通り「ス」、「ズ」と発音されますが、ポルトガルのポルトガル語では、語末のsは基本的に「シュ」の発音になり、他の場所に置かれたsは「ス」「ズ」の発音に変わります。

文法の違い

どちらの文法に則って話してもお互いに通じ合うことは可能ですが、ポルトガルのポルトガル語とブラジルポルトガル語では、文法は多少異なります。元々ラテン語由来のポルトガル語は、フランス語、スペイン語と同様に主語人称代名詞によって動詞を活用させます。“eu (私)” “você (あなた)” “vocês (あなたたち)”の活用はポルトガルとブラジルで全く同じですが、その他の主語の時は異なります。ブラジルでは、相手のことを主語に置くときは、相手との関係性にかかわらず “você (あなた)”が使われ、ポルトガルでは、”você (あなた)”は改まった表現で、友達同士では “tu”が使われます。また、主語によって動詞の活用も変わってくるため、ポルトガルのポルトガル語を学習するなら活用形を一つ多く覚えなければなりません。

今回はポルトガル語の歴史と、ポルトガルで話されているポルトガル語とブラジルポルトガル語の違いについて紹介しました。plus connectionでは、歴史やポルトガル語についての専門知識のある翻訳者や通訳者が在籍しております。まずはお気軽にご相談ください。