ある言語に特化し精通している通訳者ですが、実は弁護士のように公的に取得していなければならない資格が存在しないのはご存知ですか?
今回は通訳者にとって必要なスキル、そしてその言語能力や実力、精通度を証明するために取得している資格をご紹介します。

通訳者にとって必要なスキル

■コミュニケーション能力

通訳者にとって、話し手と聞き手の会話を仲介するにあたって、コミュニケーション能力は必須です。
お互いの関係性を理解し、尊重しながら適切な言語表現や言葉遣いで会話を進行することが重要になります。
公演や会議等で大勢の人の前で発言したり注目されたりする機会があるので、人見知りであるとかあがり症の方には厳しいかもしれません。

■語学力

高い語学力は通訳者にとって最も重要なスキルといえるでしょう。
異なる言語を両方ともスラスラと話せることはもちろん、スムーズに聞き取れることが大前提となります。
その磨き方は大学の外国語学部に入って勉強する、語学留学をする、通訳者養成学校に通う等様々です。
ただTOEICで高得点を取っているので英語が得意、というだけでは通訳者として活動できるとは言えません。

■通訳言語についての背景的知識や経験

ただ単に言語を通訳するのみでは、話者の発する言葉に込めた深い意図を相手に伝えることは難しい場合があるかもしれません。
その言語を使用する地域の文化的背景や状況、タイミングによってはその独特の言い回しを的確に訳す上で言語に対する知識は必要といえます。
また、大学や通訳者養成スクールで学んだことも大事ですが、実際に現場で経験を積むことは状況に応じて臨機応変に対応する力が身につきます。
予期せぬ事態が起こっても慌てず対処することができれば、クライアントの信頼度もアップするはずです。
以上が、通訳者にとって必要な能力とスキルです。
これからは通訳者として活動するに当たってその実力をクライアントが確認できる資格をご紹介していきます。

通訳者の資格

■TOBIS(ビジネス通訳検定)

OBIS(トービス)は、「CAIS(特定非営利活動法人 通訳技能向上センター)」が提供しているビジネス通訳検定です。                            
「CAIS」は2004年に通訳者のスキルアップを目的として設立されたNPO法人で、TOBISは企業や法人でビジネス通訳を行う通訳者のスキルを判定する試験です。
試験内容は日本語⇔英語の逐次通訳と同時通訳で、1級から4級を判定します。
試験は実際の企業でのビジネス通訳業務を想定されたシチュエーションで行われ、実務での対応力やスキルを測ることができます。
通訳スキルだけではなく、ビジネスや時事内容への対応力も見られるので、日頃からニュースを見て知見を身に着けているか、ビジネス通訳の知識があるかなどが試されます。
TOBISの試験は実力や講師経験のある通訳者が担当し、フィードバックや個別アドバイスもあるので、今後に活かす事ができます。

■全国通訳案内士

全国通訳案内士は海外から日本にやってきた外国人に日本の歴史や文化を紹介し、旅行や観光の案内やサポートを行うことができる資格です。
言語系の資格では唯一の国家資格で、試験は気象予報士や行政書士と並び、中程度の難易度と言われていますが徐々に合格者は減少傾向にあるようです。
試験内容は筆記試験(外国語・日本地理・日本歴史・一般常識・通訳案内の実務)の一次試験と、二次試験の外国語の口述があります。
語学力はもちろん必要ですが、日本を案内するにあたっての歴史や地理などの知識や日本の政治や経済、文化に対する教養なども身に着けておくことが重要です。
中でも筆記試験の難易度が非常に高く、上記のような日本に関する知識だけでなく、話題のアニメや映画で出てきた場所についても出題されるようです。
取得するのに国籍の制限はないため、近年のインバウンド観光の盛り上がりに伴って日本人でない方も取得する方が増えているようです。
また、特定の地域においてその地域に根ざした文化や歴史を外国人に案内できるように自治体が行う研修を受けて合格した通訳者に向けた「地域通訳案内士」という資格もあります。

■TOEIC(Test Of English for International Communication)

以前、別コラムで詳しく紹介しましたが、TOEICも通訳者の語学力を判断するのに適した試験といえます。
TOEICには様々なスキルを測る5種類のテストがありますが、990点満点で知られている「TOEICR Listening & Reading Test」がいちばん有名かと思います。
一般的には、第一線で活躍している通訳者のTOEICスコアは平均的に950点以上の方が多いようなので、950点がある程度の通訳者の技量指標と考えていいでしょう。
また、通訳者養成学校では、入校する要件が英検1級やTOEIC900点以上であることが多いそうです。
しかしながら、通訳者の語学力の高さを判断するのにTOEICの高スコアが必ずしも必要とはいえませんし、高スコアだからといって通訳者として実力があるといえませんので、参考程度にとどめておきましょう。


通訳者の資格やスキルを判断する上で代表的なものをご紹介しました。
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