翻訳者には、通訳者と同じく取得しなければならない必須の資格はありませんが、その語学力や翻訳能力の判断材料となる資格やスキルはいくつか存在します。
今回は英語翻訳者の資格やスキルをご紹介していきます。
翻訳を依頼しようと考えていらっしゃる方はぜひご参考にしてみてくださいね。

英検1級

別コラムでも軽くご紹介した英検1級ですが、こちらも翻訳者の実力を判断する上でひとつの指標となります。
英検1級は大学上級程度のレベルとされており、こちらを取得していると日常的な英語の読み書きのみならず、ビジネスの場や社会生活の様々な場面において英語を難なく使用し、理解できることを証明することができます。
受験者は近年減少傾向にありますが、日本での知名度は高く、根強い人気を誇る資格です。
難易度は非常に高く、試験は読解力の「リーディング」聞き取る力「リスニング」書き取る能力「ライティング」話す力「スピーキング」の4つで構成されています。
各項目では一定の合格基準が設けられており、全項目においてバランス良くスコアを獲得することが求められます。つまり、何れかの項目で満点をとっても、他の項目で基準点以下であれば落第となるのです。
英検1級を取得しているということは、就職活動おいても英語を使用する国際的な業務を担当できたり、社内翻訳者になることのできる基準であったりとその高い英語力を社会でアピールすることが可能です。

JTA( Japan Translation Association)公認翻訳専門職資格基礎試験

JTA公認翻訳専門職試験とは、JTA(一般社団法人日本翻訳協会)が実施している翻訳者の語学力を測定する試験です。
元々は「翻訳技能認定試験(翻訳検定)」という名称でしたが、試験内容や受験方法がアップデートされ、現在の名称になりました。
受験科目は英語部門と中国語部門があり、4科目の試験全てに合格し、翻訳の実務経験2年の審査を実施したのちに「JTA 公認翻訳専門職(Certified Professional Translator)」に認定され、公的な翻訳における資格の証明として保持できます。
また科目は、「翻訳文法技能試験、翻訳専門技能試験、翻訳IT技能試験、翻訳マネジメント技能試験」の4つに分かれており、翻訳家としての語学力や実務における能力などが総合的に判断されます。
「翻訳のプロフェッショナルとしての能力」を判断して認定する試験なので、難易度はかなりのものだそうです。
日本における翻訳に関する資格の中でかなり有名なものになるので、翻訳者の実力を証明する資格といってもいいかもしれません。

JTFほんやく検定

一般社団法人日本翻訳連盟(「JTF」Japan Translation Federation)が主催する試験です。
級ごとに難易度が分かれており、初級者向けの「基礎レベル:5級・4級」、実務経験者向けの「実用レベル:英日翻訳・日英翻訳」が用意されています。
試験内容は、「政経・社会」「科学技術」「金融・証券」「医学・薬学」「情報処理」のうち1分野を選択して翻訳し、その翻訳の完成度に応じて1級から3級の合否を判定します。
試験内容は実務における状況を想定したものが用意されており、採点者も現役のプロが行っているのでその資格における信頼性はかなり信用できるものといえるでしょう。
また、翻訳の能力を測るだけでなく、有能な翻訳者の発掘も目的としているそうです。

知的財産翻訳検定

知的財産翻訳検定とは、日本知的財産翻訳協会(NIPTA)が2004年1月から実施している、その名の通り「国際的な特許出願に対応できる知的財産に関する翻訳」の能力を測る試験です。
日本から海外に対して特許出願する際に必要な明細書や契約書の翻訳には専門的な知識が必要になるので、それらを本試験によって促進することにより、日本の経済の発展に貢献するという狙いもあります。
試験内容は1級から3級とあり、1級と2級は記述式と選択式の2つで、1級は左記に加えて面接試験も用意されています。
また、1級での記述試験では「知財法務実務」「電気・電子工学」「機械工学」「化学」「バイオテクノロジー」の中から1分野を選択して挑むことになっています。
試験言語は英語とドイツ語と中国語です。
難易度としては1級に関しては年間十数人しか合格者がいないということ、翻訳力だけでなく難解な知的財産に関する知識が必要になるということで、かなり難しいといえます。
1級の取得者については、5つの分野ごとに知的財産翻訳検定の公式HPに掲載されるので、翻訳者としての実力の判断基準としてはこちらの資格もかなり参考になるでしょう。

TOEIC

別コラムでもご紹介したTOEICも翻訳者の語学力を確認するひとつの基準となります。
翻訳者としてのスコアは大体850点〜900点以上が目安とされていますが、TOEIC自体が翻訳の制度や実務での対応力を測る試験ではないため、あくまで目安として参考にしてみる程度でお考えください。

英語翻訳者の実力を判断する上での目安となる資格や試験をご紹介しました。
しかしながら、上記資格を保持していないからと言って決して実力不足ということではなく、翻訳者それぞれが得意とする分野やこれまでの翻訳実績も非常に重要であり、お客様の目的に沿って翻訳されているかなども大事なポイントになってきます。
弊社では、翻訳者のプロフィールや実績の開示にも柔軟に対応しておりますので、ご希望の際はお気軽に申し付けください。