ベトナム語は、ベトナム社会主義共和国の総人口のおよそ87%を占めるキン族の母語であり、ベトナムの公用語です。キン語ともいい、ベトナムの少数民族の間でも共通語として話されています。他にも、中華民国(台湾)、アメリカ合衆国、オーストラリア、カナダ、フランスなどに居住しているベトナム系移民によっても話されており、世界に約7,000万人の話者がいる言語です。
ベトナム語の歴史について、ベトナムには元々文字がなく、言葉は口語のみでした。中国の支配を受けたり離れたりと1,000年前から中国との摩擦が絶えない国でした。しかし、ベトナムの文化は中国の影響を強く受けており、歴史的な記録物は漢字で書かれているものが多く、「チュノム」という自らの国で発達した難しい漢字も合わせて使用されていました。ベトナムに昔からある口語は、中国語に由来しているものが多く存在しています。
しかし、その後ベトナムはフランスの植民地となり、現在使用されている「ベトナム語」は17世紀にフランス人の宣教師が考案したものです。口語をローマ字にし、発音記号をつけました。植民地となってからもベトナム古来の漢字文化「チュノム」を使用していましたが、あまりにも複雑な漢字が使われていて一般には普及しませんでした。そして、ベトナムが独立し、フランス人が作った文字が現在のベトナム語の正式な表記法となりました。
今回は、上記で述べた他にもベトナム語について知っておきたい8つのポイントについて紹介します。
アルファベット表記
ベトナム語はアルファベットを用いて、その上下に「声調記号」や「母音記号」をつけて表記します。F、J、W、Zの4文字はなく、DはほかにĐがあります。読み方は日本語のローマ字読みと似ているものもありますが、そうではない独自の読み方がたくさん存在します。
6つの声調
中国語(北京語)には4つ、タイ語には5つの声調がありますが、ベトナム語は6つあります。単語内の音のイントネーションが変化するだけで、同じ綴りでも意味が変わります。ベトナム語が「まるで鳥のさえずりのよう」と言われることはあるようですが、この豊かな声調が理由かもしれません。
声調一覧 a à á ả ã ạ
12の母音
「ベトナム語は発音が難しい」としばしば言われることがありますが、6つの声調に加えて母音が多様に存在しているからかもしれません。日本語には「ア・イ・ウ・エ・オ」の5種類が母音ですが、ベトナム語には合計12種類「アが3つ、イが2つ、ウが2つ、エが2つ、オが3つ」あります。同じ綴りの単語でも母音が違うだけで意味が変わってしまうので、区別が必要です。
母音一覧 a â ă i y u ư e ê o ô ơ
文法はSVO
英語と同じで、文法は基本的には【主語+動詞+目的語】の形をとります。
単語は一切変化しない
ベトナム語は発音で私達を苦しめるかもしれませんが、文法はいたってシンプルです。ベトナム語は、名詞も動詞も単語が一切変化しません。例えば、動詞では、その文の主語が単数か複数か、一人称か二人称か三人称かによって、後に続く動詞が変わることもなければ、動詞の過去形・未来形といった変化がないのが特徴です。過去や未来を表したいときには、次のように専用の単語を追加すれば問題ありません。
未来系:Tôi sẽ ăn phở. (私・「でしょう」の意味合い・食べる・フォー)
過去形:Tôi đã ăn phở. (私・「ました」の意味合い・食べる・フォー)
フランス語の影響
ベトナム語は漢字の影響が強いですが、100年弱に及んだフランス植民地支配の影響で、フランス語から外来語としてそのまま定着した単語が存在します。例えば、cà phêはカー フェと読み、フランス語のcafé(カフェ)から由来しています。
地域による差異
ベトナム語には、地域によって多少の違いがあります。単語は同じでも読み方が違う場合もあれば、単語が丸ごと異なる場合もありますが、それぞれの土地の言語を話しても通じ合うことができるようです。
「あなた」と「私」がたくさん
英語ではすべてIとYouで済んでしまう一人称、二人称ですが、ベトナム語は多様に存在します。相手が自分より年上の男性ならanh(アイン)、女性ならchị(チ)、年下の男女なら共にem(エム)といったように、相手と自分との関係性において二人称を使い分けます。また、同時に自分を指す一人称も変化します。テキストでは二人称のみを変化させ、一人称を便宜的にtôi(トイ)で統一させていることが多いです。
ベトナム語の知っておきたい8つのポイントを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。歴史的な背景やベトナム語独自の構成が存在しました。plus connectionのベトナム語翻訳者、通訳者は、ベトナム語の専門知識のある者が在籍しております。上記のベトナム語についてはもちろん、豊富な知識、実績を持っておりますので、ご相談いただければ幸いです。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。